フェ○チオ北海道

新人監督・苅谷文が、巨匠・平野勝之を追いかける期間限定ドキュメンタリー。

追記ーメモ

9月1日

クッチャロ湖へ向かう走行中、昨晩、興部道の駅の列車の中で一緒だった、チャリダーの男の子に声をかけられる。
昨晩、挨拶くらいしか交わさなかったので、一瞬、誰だかわからなかったのだが、向こうが「昨日はどうもー」と言ってくれたので、思い出した。

ほとんどのチャリダーが乗っているのと同じ、組み立て式のマウンテンバイク?に乗っている。
あとから来たのに、当然、追い越される。
どれくらいのスピードで走っているのかと思って、車間距離を保って、追いかけてみる。メーターを確認すると、彼は25〜8キロくらいで走っている。すげーな。こっちは時速、平均約15キロくらいで、途中、自転車を引きずったりもしてるので、余裕を持たせて、だいたいのスピードを平均約10キロと計算して走っているというのに。チャリダーって、みんなそんなに早いスピード出してるの!?オイラなんか、下り坂以外の道で25キロ出そうと思ったら、思いっきりこがなきゃ無理っすよ。まあ、この自転車がアレって理由も大きいんだが…そこは目をつぶろう。自転車に罪はない。
(※注意:あと、私の場合は、ところどころで撮影しなきゃいけないので、ストップしたり、来た道を往復したりと、ロスタイムが長いのだ。通常、平均のスピードはもっと速いと思われるので、これからツーリングを考える方は、ご参考あれ。)

彼が私の前を走るのをカメラで追った。
あーあ、これが平野さんだったらなぁー、なんて、少し思った。今さら思っても仕方ないけど。会わないと決めたのは自分なのにねぇ。

んで、彼もクッチャロ湖に泊まるようで、行く先が同じだったので、私の進む方向に、ずっと彼の自転車があった。
クッチャロ湖市街のコンビニで彼が停車し、私もそこで一旦停車して休む事に。
オイラは小休止して水分を取ったら、宿探し(例の、ライダーハウス)をしようと思っていたので、早々と切り上げたが、彼は漫画を立ち読みしていた。
暫く観察してみたが、夢中で漫画の世界に入り込んでいるようで、我関せず、といった感じ。彼のかぶっている帽子には、「日本一周」と書かれている。
ああ…、こいつも日本一周組かぁ…。何が楽しくて、日本一周とかするんだろ。わからん。
広い北海道で狭い漫画の世界に身を投じている彼を見ていると、バカバカしい気分になる。キミの想像力は北海道より広大だよ、うん。日本中のコンビニで漫画を立ち読みしてくれたまえ。


さっさとコンビニを後にした。

何も考えないで走れ

9月1日
ルート:興部道の駅→クッチャロ湖
距離:約110キロ

今日の目的地はクッチャロ湖。興部からは100キロの地点にある。今日中にここまでたどり着きたい。地図を見ると、この道中には、ほとんど何もないようだ。クッチャロ湖まで出れば、街と温泉がある。ここまで行こう。ただ、距離は100キロ以上ある。連日の疲労と、虚弱体でたどり着けるのだろうか...不安だ。

朝、5時半頃、列車の中で目が覚める。おじさんの寝袋のおかげで、どうにか眠れた。あれだけ他人に囲まれた居心地の悪い中で、よく眠れたものだ。それだけ疲れていたのだと思う。おじさんに御礼を言う。一方、おじさんは、どうやら寒さであまり眠れなかったようだ。悪い事をしてしまった。

早々に寝床を出て、自転車に積荷をしていると、おじさんと、わたしの隣で寝ていた女の子ライダーが外へやってきて、私の自転車を見てビックリしていた。「え〜ママチャリで来たの!?」と毎度の文句。いつも、この言葉を浴びせ掛けられるのは、恥ずかしい。思わず、下を向いてしまう。
どうやら、おじさんも女の子も、昨日は稚内方面からやってきたようで、私が稚内の方へ向かうと言うと、情報をくれた。といっても、「行く先、何もないよ」というだけの情報だったが…。「夜になったら、星空の下で寝ることになっちゃうよ、気をつけて」と言われた。いやぁ、オイラ、夜でも走っちゃうんですよ、これが。
んでも、「何も無い」という情報は、割と役に立つのだ。何が何でも、街に出るまで止まれないんだな、という事がわかれば、自ずと走る距離が決まる。結果、今日はクッチャロ湖まで走る以外、何もないということがわかった。
私が「今日はクッチャロ湖まで行く」と言うと、おじさんは目を丸くしてた。「バイクで行くにも心配になる距離なのに、すげーなー」だって。
それでも行くぞー。走ればいいんだ、とにかく。走れば、着く。それだけだ。

おじさんと女の子と長話をしてしまったので、少々出発が遅れる。7時半頃に道の駅を後にした。

んで、後は238号線をまっすぐ。
ひたすら走った。
オホーツク海が右手に広がっている。いつまでも変わらない景色。
途中、コンビニを発見するたびに、水分補給と休憩を取る。ここ数日間は、走行中のコンビニで食事を買って済ませることが多かった。ん〜、グルメなオイラには辛い。あとね、料理好きなオイラとしては、長いこと外食や買い食いが続くと、ストレスになってしまうのだ。自分でちゃんと作った物を食べたい。家に帰ったら、旬の野菜と魚を使って煮物を作ろう。

んで、もう、今日も「走る」以外には何もしてない。ほんまに「走る」オンリー。
途中、「どんぐりの森」っていう、両脇を森に囲まれた道を走ったりした。歌う曲はもちろん、となりのトトロの、あの歌ね。ピッタリ。
あと、カムイ岬をぐるっと走ったりね。急カーブが気持ちいい。カムイ岬を通過するには、トンネルを潜る道と、岬を眺めながら回れる道があるのだが、お勧めはもちろん後者。波を見ながらゆっくり走ってみてくれ。なかなか爽快よ。

とにかく、走る以外なにもすることがない。
なので、走行中、撮影のネタはもちろん、ステージ用のネタがいくつも思い浮かぶ。そのたびメモを取りたいのだが、走っているとそうもいかない。頭のメモに書き込むけど、色々あるうちに忘れてしまうのだ。
今日の道中に、すげーおもしろいことを思いついたのだが、すっかり忘れてしまった。もったいない。まあ、いいや。そのうち思い出すだろう。

海沿いの道は、平地なので坂は比較的少ないが、海からの横風が強く、なかなか走りづらい。向かい風にやられると、もう前に進まないので、自転車をひきずって歩くほかないのだ。風は坂道より辛いかもしれない。直面すると、ペダルが固くなるので、思い切り踏み込まなくてはならない。体重を前にかけるため、腕の力も相当使う。全身に余計な力がかかるため、体力が消耗するのだ。

あと、海を走るより、山の方が楽しいかもしれないなぁ、なんて思った。海沿いの道は、平坦な景色が続くばかりで、飽きてしまうのだ。山道は、そりゃあ、大嫌いな虫はいるし、深い森に囲まれてて怖いけど、峠の先には、必ず下り坂が来る事がわかっている。辛い上り坂を終えた後、森の中を猛スピードでビューンと駆け下りていくのは、実に爽快である。まさに、「もののけ姫」の世界。オイラ、もののけ姫だーーい!ワハハ〜!ってな気分になる。実際、あのテーマソングを何回歌った事か。♪はりつめたーゆみのー、ってアレね。それ以降の歌詞がよくわからんので、テキトーだが。
そしてね、それぞれの峠道に、それぞれのドラマがあるのに気づいた。峠には、出会いと別れのような物悲しさがあるのだ。これは、車で峠を越えた人には絶対に発見できないものだと思う。
苦しみの先の美しさに価値を覚えない私であったが、一ヶ月もこんな道を走っているうちに、嫌でも体が順応していったようだ。やはり、人間の世界は「思い込み」で構築されているのだな、と改めて認識する一瞬であった。


んで、クッチャロ湖に着いた。17時過ぎだった。無事、100キロ完走。

ライダーハウスに一度も泊まったことがないので、ここ数日続いている「貧乏ゴッコ」を続行すべく、ライダーハウスに泊まってみようと思う。共同部屋で、1000円以下の値段で安く泊まれる、ライダー専用の宿をこう呼ぶんだそうだ。んで、探す。地図を見ると、湖の近くに一軒あるらしいのだ。グルグル回って探してみるが、見当たらない。なんだよ、このアバウトな地図め!!路線の真ん中にマークがついてるだけじゃないか!こんなんで目的地が探せるか、バカ!もっと詳しく書きやがれ!
無理もない。私が持っている地図はバイクのライダー専用の地図で、その通り、バイクで走る用に作られているのだ。そのため、地図の範囲が広い。重要なポイントだけが記載されていて、細かいことは省いてある。車やライダーにはお役立ちかもしれないが、限りなく徒歩に近いスピードの私には不便である。ちなみに、この地図は平野さんとおそろい。「俺はこれを見て動くから、これを買っておけ」と教えてもらった。事前に、地図の読み方なども軽く伝授してもらったのだ。だけど、オイラ、”地図の読めない女”なのよねぇ〜。基本的な距離の数え方はわかったけど、地図に沿って動くということが出来ない。目の前にある道は、道であって、地図上の線として解釈できないのだ。

探し回っている途中、ちょうどクッチャロ湖に夕日が沈んでいくのが見えたので、いったん手を休め、湖の方へ。曇りではっきり綺麗にはみえなかったけど、雲の隙間から真っ赤な夕日が確認できた。湖に沈んでいくのをみていた。日が沈む前に到着できてよかった。100キロ以上走ったのかぁ...実感がないや。

んで、さすがに宿探しなんかに時間をかけるのは嫌だったので、あっさりと貧乏ゴッコを終了させ、湖の近くの温泉宿に泊まることに。温泉に入って疲れを取ろう。でないと、明日の走行が厳しくなる。
そう、明日は最北端・宗谷岬まで行くのだ。だけど、そこが到着点ではない。通過して、稚内まで行く。距離は約90キロ。連続で長距離走行をすることになる。体力がもつだろうか…。

クッチャロ湖の温泉は、まあ、65点といったところ。
やっぱ、留辺蘂町で入った、塩別つるつる温泉がナンバーワンですわ!あれには敵わないね〜!化粧水いらずなくらい、肌がつるつるになるのだ。北海道を訪れる女性には、一度入っておくことをお勧めする。ちなみにこのつるつる温泉、山に囲まれた中に位置しているので、携帯が通じない。ご注意を。オイラは、逆にそれが快適だったけどね。2泊したけど、誰にも邪魔されないひとりっきりの時間を満喫したわ〜い。温泉も、夜中に入って、貸し切り状態で楽しめたし、料理は美味しかったし、昼寝もしたし、ぜーたくだったわい。

失礼、話がそれた。
んで、なんだかんだで寝たのは2時くらい。明日、早めに出なきゃいけないのに、こんな時間にしか眠れない、オイラ。どこへいっても、夜行性だけは直らないようだ。

私が北へ向かう理由

8月31日
ルート:サロマ湖道の駅→興部道の駅
走行距離:約85キロ

実は、私が北へ向かうのには、理由がある。
でも、まだ明かせない。
どうしても、ある場所でやりたいことがあるのだ。


5時にサロマ湖道の駅を出発。雨はあがり、晴れていた。
体がフラフラして、目が霞む。
精神力だけで走った。

ちょうど、背中側から朝日が昇ってきた。
オホーツク海に朝日が差す。太陽に見送られる形で、北へ進む。
進むだけだった。途中、何度も車にクラクションを鳴らされて、我に返った。それだけ、フラフラ走行だったのだろう。

もう、この日のことは、うる覚えなのだ。それだけ眠かったせいだと思う。

途中、紋別の温泉で入浴。
昨日、お風呂に入れなかったので、早く入浴したかった。
それに、今日もひょっとしたらお風呂に入れないかもしれない、その可能性も考えて、お風呂は入れるときに入ることにする。
紋別温泉、日帰り入浴で600円なり。お湯はイマイチ。それでも少しは疲れが取れたかな…?一時間以上、温泉でのんびりした。

昨日、道の駅で寝た影響なのか、もう、北海道にお金を使うのが嫌になってきた。野宿すればタダなのに、毎日ホテル代に1泊平均8000円も支払えるかっての。この1ヶ月間、北海道の経済を支えてきたのは自分であるかのような気さえしてくる。事実、それだけお金を使っているのだ。行く先々の観光ホテルに泊まり、美味いものを食べるわ、荷物&撮影したテープをまめに東京へ送るわ、毎日コインランドリーを使うわ、水をいちいち買うわ、ことある度に金を使っている。最初の数日間はハイヤーを使いまくってたしなぁ…。
もう、お金を使いたくない。どうして私にとって苦痛でしかない土地に、こんなに投資しなきゃならないの?自分で勝手にやってる事とはいえ、腹が立ってきた。今日も道の駅に泊まろう。もう、無駄なお金は使わないぞ!

行き先の「興部道の駅」には、どうやら列車の中で眠れる宿泊所があるらしく、無料らしい。地図に書いてあった。そこに泊まろうと思う。
紋別温泉を出たのが15時で、そこから興部道の駅までは25キロ。
どうにか、日が暮れるまでには間に合いそうだ。本当はもう少し距離を伸ばしたいところだけど、早めに寝て、明日に備えた方が効率がいいだろう。
というわけで、興部を目指す事に。引き続き、238号線をまっすぐ進む。
右手にオホーツク海が広がっている。海を楽しむ余裕など、ない。
(この中間の道のりは、眠さ爆発で、よく覚えていないのだ)

興部道の駅についた。
日暮れギリギリ。
で、、、ありましたよ、列車の形の無料宿泊所。
駐車場の脇に、走らない列車を発見。これか……
列車の外には、数台の自転車とバイク。どうやら、先客が中にいるようだ。車内を覗いてみると、寝台のようなスペースが、ひとつ横に広がっていて、それ以外は何もない。その寝台に、すでに他のライダーさんの寝袋や荷物が置かれていて、一人、もうすでに横になっている人もいた。仕切りも何もない、ただの寝床スペースなので、男女も同じ。同じ板の上で、他人が川の字状態で寝ることになる。顔面が真っ青になる。なんてこった…

私の到着が遅かったせいで、すでに他の人がスペースを陣取っていて、私の入る隙間がない…もじもじしていると、ちょうど一番右端に陣取っていたおじさんライダー(FROM名古屋)が、親切に声をかけてくれた。自分のスペースを少し空けて、ここに入れば、といってくれた。助かった。私は、右から二番目の、おじさんの隣にスペースを取ることに。左隣は、女の子ライダーだった。安心した。

もう、眠気が限界だったので、顔を洗ってから、すぐ寝ることに。
寝る前の日記を書いているうちに、ウトウト…
数行しか日記を書けなかった。そのまま眠りに入ろうとする。
寝袋がないので、釧路で防寒用に新しく買った、ジャージとジャケットを重ねて、厚着をする。昨日役立ったレスキューシートは、冷えてきてから使おう。全員寝袋を使っているのにも関わらず、自分だけ銀のシートなのは、恥ずかしかったのだ。
寝袋も使わず、そのまま眠ろうとしている私に気付いてか、隣のおじさんが、私に寝袋をゆずってくれた。おじさんは、今までの旅で、寝袋は一度も使用しなかったらしい。蒸し暑くなるからキライなんだとか。いいからコレを使いなさい、と言って私に譲ってくれた。おじさんは、厚着をして(ライダースーツまで着込んでいた)眠ってくれた。昨日ほどじゃないけど、今日の夜も割と冷えたので、申し訳なかった。2や連続で、男性に健康を助けられた。ありがとうございます。ご恩は忘れません。

熟睡したい...。
寝袋に包まって、寝た。


この日のことは、よく覚えていない。
夢をみているような一日だった。
現実がどこにあるのか、わからない。