フェ○チオ北海道

新人監督・苅谷文が、巨匠・平野勝之を追いかける期間限定ドキュメンタリー。

空白の2日間…その2

8月25日の記録

やはりテントの中では熟睡できない。朝が来ると眩しいので自然に目が覚める。睡眠不足で関節が痛い。

洗い場で日焼け止めクリームを塗って身支度をしていると、M君が朝ごはんに誘ってくれた。山篭もり用にと食料だけはたくさん備えているとのことで、朝からボリューム満点のごはんをいただく。トーストとハムエッグ、スープ、人参とキュウリのサラダ、チーズ、キウイ。野菜はキャンプに来た他の人から頂戴する事もあるとか。根野菜は腐りにくく、長持ちするので、持ち運びするのに最適とか、いろんなキャンプのマメ知識を頼んでもいないのに教えてくれる。調理は小さいガスコンロを使用。火加減が聞かないので、トーストはいつも焦がしてしまうという。アウトドアの話になると、止まらなくなるM君。その話しかしない。だけど、なぜか、聞くのがもう嫌ではなくなっている。

一旦、M君と別れて、釧路に戻る。
行きの道で自転車屋さんに立ち寄り、空気を補充。ご主人がサービスでチェーンに油をさしてくれた。「これで稚内まで行けるよー」と、頼もしいお言葉。

駅に到着。くうの航空券窓口でチケットを払い戻した。自転車の宅急便と、本日宿泊の予約を入れていたホテルをドタキャン。
これで引き返せなくなってしまった。

今日はキャンプ場に泊まることを見越して、携帯とカメラのバッテリーを充電しておかなくてはならない。駅のロータリーにあったコンセントから電気を拝借。通行人が行き交う中、堂々と電力泥棒。スペアのバッテリーでその様子を撮影していたら、駅員さんがやってきて、怒られるかと思いきや、「ああ、写真撮ってるの?」と、カメラの方に目がいったようで、危うく電力泥棒を免れる。すまんです…。それにしても、こっちの人はビデオカメラを写真だと捕らえるのよねぇ、そりゃ静止画も撮れるけどさ。そういえば、帯広のタクシー運転手さんたちに、撮った映像を見せたら、「音も入るんだー」と驚いていたなぁ。すげーよ。ローテクすぎるよ、北海道。

さて、新たにコンセプトTシャツを作ることにした。
「アンチ・チャリダー+アイラブ東京」は終了。舐め切ったフェ○チオ北海道はおしまいにする。
受け入れよう、この現状を。北海道を挿入してみる。何も文句は言わない。入れてみるんだ。
コンビニで買った白Tシャツを釧路駅前で広げる。ベンチに座り、油性ペンでデッカく書く。次のコンセプトは、ずばり「アイラブ平野+WANTED平野勝之」。サムい旅人代表の平野勝之と、北海道を受け入れる。サムい奴らよりもっとサムくなってやる。誰にも文句が言えないように。

いざ、Tシャツを着込んで、カメラをフィックスで設置。人々がジロジロこっちを見ている。何とでも見ろ。

「やっぱり平野さんに会いたーい!」そう叫んで、釧路駅前から再出発を切る。目指すは最北端。
本当は、最北端になんか、平野さんはいないんだ。わかっている。でもいい。奇跡を追い求めたい。いつでも。

Tシャツを作っていたせいで、駅を出発する頃にはもう薄暗くなっていた。途中、小さなスポーツ洋品店にて、防寒用の服を買う。テントで寝るには、暖かい格好をしなくてはいけないからね。あんまりいいものが揃ってなかったけど…、とりあえず暖が取れそうなものを選ぶ。長袖のジャージ?みたいなのと、風を通しにくいジャケットを購入。北海道はもう秋が近づいていて、朝晩はとても冷える。特に、道東は山に囲まれているので道内でも一番気温が低いのだ。この旅行用にと、東京で防寒ジャケットを買ったのに、どうせテント生活なんかしないもん!とたかをくくって送り返しちゃったのだ。買ったもの、何も使用せず……はぁー。寝袋もテントも新品のまま東京で待ってるなぁ……。会社に荷物を送っているので、社員にこちらに送り返してもらうように頼んでもいいんだけど、いつどこに移動するかわかんないら、送ってもらいにくいのだ。

塘路キャンプ場までは約25キロ。釧路市街を出るときに既に日暮が近づいていたので、このまま走れば、山道の途中で真っ暗になることは間違いなし。危険だ。車の交通量も割と多い道なのだ。でも、M君と約束した。キャンプ場まで行こう。

真っ暗の山道を自転車で走る。外灯がなく、本当の闇になる道が続いた。自転車の小さなヘッドライト以外の光りはない。目の前が黒。むちゃくちゃ恐い。周りが見えない。黒一色。
上り坂は自転車を引いて、くだり坂は思い切って黒の中に突っ込む。急カーブは命懸け。こえーよーー!死ぬかもーー!なんていい気持ち!!

野性の鹿が出没する場所なので、ぶつからないように、声を張りながら走行。(野性動物の接近防止には、音を出して自分の居場所を知らせるのがいいらしい。そうすると警戒してやって来ないんだとか)デカい声で平野コール!ひ・ら・の!ひ・ら・の!平野を叫びながら暗闇走行。本人に怒られようが、構わない。

続いて、松田聖子メドレー。私が聖子を知ったのは、すでにSAYAKAが生まれたあとだったが、細野晴臣さんが好きだった流れから、聖子を聴くようになった。ベスト盤を一枚持っている。「蒼いフォトグラフ」を熱唱。
今一瞬あなたが好きよ、明日になればわからないわー、って部分が好きだ。大声で歌う。最高にパンク!車にひかれても生きちゃうぜー!

野性動物に向けてのナイトショー終了。キャンプ場に無事到着。21時近かった。M君はキャンプ場入口のわかりやすい場所にテントを張ってくれていた。もう私は来ないだろうと見越して、ちょうど寝ようとしていたところだったそうで、私が着たのにすごく驚いていた。「あんな暗い道を走ったのー!?」だって。ハハハ。

M君はそんなオイラに、わざわざラーメンを作ってくれた。寝るところだというのに、申し訳ない。野菜を切って入れてくれて、ヘルシーなラーメン。ありがたや。
夜中まで話したあと、寝ることに。
M君は私にテントと寝袋を譲ってくれて、自分はベンチで寝るという。申し訳ないので、私が外で寝るというと、まあまあと言って促される。自分は真冬の野宿も経験してるから平気だと。一緒にテントに入ろうと誘うと、それは落ち着かないからだめだって。紳士!
んなわけで、M君はベンチで、私はの彼のテントで寝ることに。M君は、米軍用の防寒になる万能布?をかぶって寝た。テントの中には蚊が一匹入り込んでいて、うっとおしくて、なかなか眠れなかった。

んで、何事もなく朝が来た。
以降は、8月26日の日記のとおり。

M君には大変お世話になった。実は、「最北端をやめて、このまま私も山に篭ろうかなぁ」なんて冗談を言ったら、「面白いねー」とのってくれたので、そうしようかとも一瞬考えた。
でもだめだ。私の「ウザい」病が始まる前に別れよう。それがいい。